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遺伝性乳がん卵巣がん症候群について

遺伝性乳がん卵巣がん症候群について

高橋 瑞奈

(・王子総合病院)

 

日本人女性が生涯のうちに乳がんを発症するリスクは約10%、卵巣がんは約1%と言われており、現在日本人女性の乳がん罹患者数は10万人を超えるとされています。乳がんや卵巣がんの多くは遺伝する疾患ではありません。しかし、全乳がんの4%がBRCA1/2遺伝子変異に起因した遺伝性の乳がん (遺伝性乳がん卵巣がん症候群 ; HBOC) であるとされています。HBOCは過去にハリウッド女優が乳がん・卵巣がん予防目的にリスク低減乳房切除およびリスク低減卵管卵巣切除術を受けたことで有名となりました。HBOCの特徴として「近親者も1/2の確率で遺伝子変異を受けついでいる可能性がある」「乳がんと卵巣がんの両方を発症しやすい」「一般的な乳がんより若年に発症しやすい」「両側乳がんを発症しやすい」「片側の乳房に複数回がんを発症しやすい」「男性でも乳がんを発症するリスクが一般より高くなる」「卵巣がんは進行症例が多い」「前立腺がんのリスクが高くなる」「膵がんのリスクが高くなる」などが挙げられます。また、女性では80歳までに約70%で乳癌を発症するとされています。

これまでBRCA1/2遺伝子検査および遺伝カウンセリングは治療薬の適応を評価する目的で保険診療として行われてきました。しかし令和2年4月より、一定の条件を満たす施設において、乳がんまたは卵巣がんの既発症者はBRCA1/2遺伝子検査および遺伝カウンセリングが保険診療となり、BRCA1/2遺伝子に変異を認めた場合は健側乳房のリスク低減乳房切除および乳房再建とリスク低減卵管卵巣切除も保険診療で可能となりました。道内では北海道大学病院、札幌医科大学付属病院、旭川医科大学病院、北海道がんセンターで行っています。

HBOCは他のがん発症のリスクや遺伝リスクを秘めているため検査を躊躇することも多いと思います。しかし、診断によりご自身による触診を頻繁に行ったり、検診の間隔を狭くすることで早期発見につなげられる可能性や、治療介入により発がんを予防することも可能になります。血縁者に乳がんや卵巣がん発症者が多く、ご自身も乳がんまたは卵巣がんを発症した方は、主治医に一度相談してみても良いかもしれません。

2020年12月16日 苫小牧民報 掲載

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