受動喫煙をなくそう
吉村 朋真
(・苫小牧泌尿器科・循環器内科)
吉村 朋真
(・苫小牧泌尿器科・循環器内科)
受動喫煙による健康への悪影響を防ぐことを目的に、2020年4月1日に改正健康増進法が全面施行され、病院や学校などの公共性の高い施設の敷地内すべてと、飲食店やホテルなどの不特定多数の人が利用する施設の屋内が原則禁煙になりました。
タバコの煙には、タバコから直接吸い込む主流煙、タバコが燃焼する時に発生する副流煙、喫煙者から吐き出される呼出煙があります。タバコを吸わない人が副流煙や呼出煙にさらされて、自分の意思とは関係なく吸い込んでしまうことを受動喫煙、またタバコを吸い終わった人の吐く息や髪の毛、衣類、家具などに残った残留物を体内に取り込んでしまうことを残留受動喫煙と言います。
タバコの煙には5000種類以上の化学物質が含まれており、そのうち有毒物質が200種類以上、発がん物質は約70種類も含まれています。
その量は主流煙よりも副流煙の方がずっと多く、たとえばニコチンやタール、カドミウムなどは主流煙の3倍前後、アンモニアは約40倍、そしてニコチンが代謝分解されてできる最も有害性の高い発がん物質のひとつニトロソアミンはなんと50倍以上も含まれます。
タバコの煙は無風の状態でも周囲7m以上に拡散します。タバコ1本でドラム缶50本分の空気が汚されます。また喫煙者の吐く息にはタバコを吸った後8時間以上有害物質が含まれていて、たとえその間タバコを吸わなくてもずっと有害物質をまき散らしていることになります。また一旦タバコの煙が付いたものには有害物質が2~3か月間は残存していると言われています。
タバコの有害物質に長期間さらされると、気管支の粘膜には炎症が起きて慢性気管支炎になり、肺の組織は破壊されて肺気腫になります。重症になると呼吸困難で普通の生活ができなくなります。これらは慢性閉塞性肺疾患(COPD)と言います。
そして更にがんになる可能性が高くなります。喫煙との関連が確実ながんには、口腔・鼻咽頭・副鼻腔・喉頭・肺・食道・胃・膵臓・大腸・肝臓・腎臓・尿管・膀胱・子宮頚部・卵巣・骨髄性白血病で、全身のあらゆる部分がリスクにさらされます。がんの発症率は肺がんではタバコを吸わない人の約4倍、喉頭がんでは30倍以上です。
またタバコの害はCOPDやがんだけではありません。血管が収縮して血圧が上昇、血液がドロドロになり、動脈硬化が進行し、心臓や腎臓、全身の血管にも悪影響を及ぼします。この状況が続けば心筋梗塞、脳卒中といった命に関わる病気になったり、手足の血管が詰まり腐って切断しなければならなくなったりします。
タバコを吸う方は、喫煙可能な場所であっても周りの方へ十分ご配慮ください。タバコをやめたいけどうまくいかない方は、ぜひ禁煙外来でご相談ください。今は成功率の高い禁煙補助薬があり健康保険も使えます。
2020年11月25日 苫小牧民報 掲載