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バスキュラーアクセスを知っていますか?

バスキュラーアクセスを知っていますか?

飯田 潤一

(・苫小牧日翔病院)

バスキュラーは血管という意味で、血液へのアクセスということです。慢性腎不全では週に3回ほど3~5時間の血液透析を行い、大量の血液をきれいにします。血液へのアクセスとは「透析をできるようにするための血液に到達する道」のようなイメージです。シャント(動脈と静脈をつなぎ合わせた血管)があると血液透析には便利です。毎回、3㌢の2本の太い針をシャント血管に刺します。細い針でもシャント用の針は1・5㍉です。採血や点滴用の針と比べて、かなり太い。透析患者さんは、刺される痛みもありますし、血管にも、何度も無理が掛かります。シャントを作るのも、治すのもわれわれの仕事です。

 内シャントには、自分の血管をつなげる自己血管内シャント(シャント)と人工血管を仲立ちとした人工血管内シャント(グラフト)があります。人工血管には、ポリウレタン製やe―PTFE製が多数ありますが、人工血管の性能は、自己血管よりも劣ることが多く、10年以上使える方もいれば、4カ月ほどで使用できなくなる方もいます。穿刺(せんし)しやすいからといって、最初から人工血管が良いというわけではありません。私たちは シャントでも、グラフトでも、心臓に無理が掛からずに長持ちするように考え、手術をしております。最近では、シャントであってもグラフトであっても、生存率には差が無いとの報告もあります。

 シャントを長持ちさせる秘訣(ひけつ)はあるのでしょうか? これがなかなか難しく、動脈と静脈のつなぎ目を大きくすれば、詰まりづらいシャントやグラフトにはなりますが、それでは流れが多過ぎて、心臓への負担が大きくなってしまいます。そもそも動脈と静脈をつなぐことは非生理的です。あちらを立てれば、こちらが立ちません。シャントを長持ちさせるためには、PTA(経皮的血管形成術)が簡便です。PTA狭くなった血管の中に風船を入れて膨らませる手技のことです。血管は自転車のように買い替えができませんから、使えるシャントは長く使うことが大事です。PTAは狭くなった場所をバルーン拡張し、シャントやグラフトを長持ちさせる方策です。

 現在、透析患者さんには、透析の開始から40年以上の寿命があるとも言われており、長期に血液透析ができるような計画性が必要です。最初に内シャントを作り、その後バルーン拡張で修復を繰り返して行い、さらには人工血管を使用、またバルーン拡張で修復して、長持ちさせます。シャントやグラフトが難しくなった場合は、動脈を直接刺すための上腕動脈表在化手術、またはカフ型長期留置カテーテル留置を検討します。

 患者さん一人ひとり、最適な血液透析方法は違うため、誰にでも正解、という方策はありません。透析医療には手術技術がとても大事です。医師は常に研さんし、高い技術を受け継ぎ、最適な医療を継続する必要があります。

2020年08月26日 苫小牧民報 掲載

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