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COPD(慢性閉塞性肺疾患)について

COPD(慢性閉塞性肺疾患)について

鈴木 明宏

(・苫小牧市呼吸器内科クリニック)

以前は慢性気管支炎や肺気腫といわれていた、タバコが原因となる代表的な慢性呼吸器疾患です。喫煙者の2割前後に生じ、高齢者ほど患者数が多いと言われています。

原因のほとんどは長期にわたる喫煙(ほかに大気汚染や粉塵吸入、遺伝が関係している場合もあります)で、禁煙により進行速度は低下します。つまり喫煙しないことでCOPDはほぼ予防可能であると言えます。

 

日本にはCOPDの患者さんが500万人ほどいると推定されていますが、実際に診断や治療を受けている人はその1割にも満たないと言われています。日本での死因の第10位(約15,000人、2015年)に入っており、肺がんや心臓病、糖尿病など他の疾患の危険因子とされています。

 

 症状は徐々に悪化する慢性的な咳、痰や息切れが主で、人によりそれらの割合や程度は様々です。

初期には症状がないかあってもわずかで自覚しにくく、喫煙を続けてしまうため悪化してしまうことが多いようです。また、風邪をひいたときに喘鳴(胸がゼーゼーいう)や呼吸困難を自覚し、診断のきっかけになることもよくあります(頻繁に風邪をひくと訴える方も多くいます)。

同様の症状を呈するものに気管支喘息がありますが、一般に喘息はCOPDより症状の変化が強くアレルギーの関与が強いとされています(両者が合併することもあり、鑑別が困難なこともあります)。

さらに進行するとわずかな動作や安静時でも息切れを自覚するようになり、酸素吸入が必要になることもあります。こうなると風邪やちょっとした体力低下によって、入院を要するような悪化(増悪といいます)をきたすことになります。最近は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延が危惧されていますが、COPDの方は重症化しやすいといわれており、より一層感染予防に注意を払う必要があるといえます。

肺に関連する症状以外にも栄養障害や全身の筋肉量の減少(やせ)、不安・抑うつなどもみられ、フレイル(加齢による心身の衰え)の悪化因子と言われています。

 

 診断は検診でもよく行われる呼吸機能検査(スパイロメトリー)で行い、さらにCTや心電図、血液検査などで他の病気を除外できると確定しますが、気管支喘息など症状が似ている他の病気と合併することもあります。

 

 治療はまず禁煙が大前提です。禁煙はほかのどの治療よりも有効で、いつ始めても効果があり遅すぎることはありません。紙巻きタバコのほか最近は電子タバコ、加熱式タバコが普及していますが、これらも肺に悪い影響があるとの報告が目立ってきています。

 さらに気管支拡張剤や去痰剤の使用、呼吸リハビリテーションなどをおこない病気の進行を防ぎ体力維持、寿命の延長を目指します。また増悪を予防するため各種ワクチン(インフルエンザ、肺炎球菌)接種が勧められます。

 これらの治療によっても病状が進行し、息切れのため日常生活が困難になった場合、酸素を吸入しながら生活する在宅酸素療法が考慮されます。

 

 気づかないうちに進行する可能性があるCOPDですが、早期発見により進行を抑えることが可能です。検診で可能性を指摘された場合や、運動時の息切れ、2週間以上続く咳や痰、風邪の治りが悪いなど思い当たる症状がある場合は呼吸器内科を受診しましょう。

 

2020年07月29日 苫小牧民報 掲載

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