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Medical column とまこまい医報

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無症候性肉眼的血尿について

無症候性肉眼的血尿について

鈴木 信

(・とよた腎泌尿器科クリニック)

「或る日突然、普通におしっこをしたら血が混じっていてびっくりした。他に痛みとか身体の不調など、自分でわかる症状は一切ない。」このような所見を無症候性肉眼的血尿といいます。成人(大雑把に25歳以上)で無症候性肉眼的血尿が認められた場合は、泌尿器科で検査を受けられることをお勧めします。

 勿論100%病気がある(診断される)ということではありませんが、放置しておくと進行して健康被害、究極には生命予後、に関わる疾患が潜んでいることがあるからです。

 まず一番に鑑別しておきたい(有無を見極めたい)疾患として、尿路上皮癌が挙げられます。よく知られているのは膀胱癌で、稀に腎盂尿管癌というものもあります。50歳以上で、喫煙習慣のある方は特に要注意です。他には、腎癌、慢性腎炎症候群の一つであるIgA腎症(末期腎不全まで進行するタイプのものがある)、前立腺や尿道からの出血、腎動静脈奇形(腎臓内血管の疾患)、腎尿路結石(多くは疼痛などの症状を伴うが、稀に無症候性肉眼的血尿のことがある)などを念頭に検査を進めさせていただきます。

 無症候性肉眼的血尿の方が外来に来られた場合に泌尿器科で行う検査としましては、何はともあれ尿検査で受診当日も明らかな血尿があるかどうかを確認し、また、採取した尿の一部を尿細胞診という、尿中に癌細胞が存在しているかどうかを評価する検査へ提出します(結果が出るまでには数日かかります)。次いで超音波検査(エコー)を行って、膀胱、腎臓と、男性は前立腺も、形態的な異常所見の有無を評価します。また、羞恥心、不快感(疼痛と感じることもある)の面で被検者に負担を感じさせることになろうかとは思われますが、膀胱尿道鏡(内視鏡)検査実施を、初診日のうちにお勧めさせていただくこともあります。さらに、症状経過、既往、初診時診察検査を評価した上で、必要と思われた場合には、採血やCTなどの画像検査の施行についてご相談させていただくことがあります。

 このような一連の流れの中で、何らかの病気が発見された場合でも、見つかるのが早ければ早いほど、その後の治療や経過観察にかかる負担は軽いものになります。無症候性肉眼的血尿と思われた場合は、躊躇せずに泌尿器科に受診して下さい。

2020年05月27日 苫小牧民報 掲載

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