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Medical column とまこまい医報

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昔は少なかった子どものストレス関連障害(その5) ―地域内対応の意義と地域内リハビリテーシ

昔は少なかった子どものストレス関連障害(その5) ―地域内対応の意義と地域内リハビリテーシ

高橋 義男

(苫小牧市医師会・とまこまい脳神経外科)

ストレス関連障害は地域社会問題である。にもかかわらず地域の中では対応出来ない(都市伝説)と決めつけ、中央任せにするのが現状である。その結果、地域での解決の糸口はなくなり、当事者は多くの場合地域から外れ不登校、引きこもりになって、発達障害、緘黙症、うつ病などになっていく。高齢者はストレスを避けるという方針をとればよいが、若者は人間関係を主としたストレスの中で今後とも生き、成長しなければならないので避けるだけではなく、ストレスと協調ないし対峙して解決法を探る。ストレスを乗り越える経験をするには信頼できる仲間と安心できる環境が必要である。このように、子どもの成長に地域と地域の人々の果たす役割は大きい(地域内で活躍している様似中学校養護教諭石丸加奈先生、早来中学校吉多千明先生、浦河カイロプラクティックオフィス「MARU」丸山智弘先生からご助言を頂いた)。

 

9.地域内リハビリテーションの意味するもの

 ストレス関連障害はまひやしびれ、痛みなど症状の明らかな場合はもちろん、頭痛などでも不安を伴ってパニック状態となり、どうすればよいのかわからず混迷状態になっている。基本的には原因の分析、治療に時間がかかることを何となく理解してもらいながら、まずは無理矢理生活リズムを取り戻す。とっかかりは体を動かすことである。地域の中で動きを取り戻すことを目的としたリハビリテーションを始める。1人で継続的に行うことは難しいので他動できっかけをつかむ。少しでもいいから結果を感じてもらう(何となく楽になったとか)。他動の大きな目的はこもらせない、孤立を防ぐ、体が固まるのを防ぐことである。動かないなどを放置していると体の動かし方がわからなくなり、歩行障害になること(生活不活発病)なども話し、ある程度の緊張感を持たせる。口うるさくはしない。一般的な対応である散歩をしてみたらなどは口で言うほど簡単ではなく、まずは強制的に屋内で動き、歩行を始める。少しストレッチ、軽く体操、スクワット、次いで、玄関掃除など身体を動かす日常生活動作、生活習慣動作に移行する。その後、動きの範囲を広げるとともに、あいさつ、手伝い、買い物などもせざるを得ない状況にする。無理を少し感じると思う程度が効果的で、これが自己肯定の始まりである。苦しくともやる努力が必要なことを教える。本人が認識していくと少しずつ恒常化する。スポーツジムなどに行かなくとも体は動かせる。人が多いとできないことがあるのでわざわざ遠方の知らない人ばかりのところという選択より1対1が可能で、活動量をコントロール出来る地域内でのリハビリテーションを勧める。よく状況を理解してくれる人と体と脳を一緒に動かすことがポイントで、他愛のないくだらない話をしながら毎日少しずつ行う。地域の中に場所と理解者は必ずある。それが可能になったら本を読む努力をする。そして、生活に関して他人からの評価を受け、反省と反復を繰り返し自己肯定につなげていく。

体が少し動くようになったらやる気がなくても頑張って勉強する。スマホ、テレビなど、外からの情報をなるべく必要最小限とする(自律と情報の管理)。テレビ、ゲーム、携帯、ネットは短時間に決め、生活のリズムを整える。生活内容の日課表を作って、出来たら丸をつけるなどして自己評価する。自分の気持ちなど何でもいいから書いてみる。気持ちを文字にする事により精神状態はかなり整理できる。生活の中で規則性を持つこと、その積み重ねが達成、自信になること「コツコツ」の大事さを体で感じてもらう。そして、ストレスを自らの力で乗り越えることは大人になる過程に必要なのだということを認識して頑張る。「人間は教えられて、経験して成長していく動物」なのである。信頼が出来てきたら笑いが出てくる。

家庭内でできるようになったら少しずつ地域の集団に入る。友人関係だけではなく、徐々に親戚、近所が入った集団にしていく。気遣いのいらない空間、理解してくれる人々から気遣いのいる空間に入る。その状況ごとに体が反応して、自分の精神状態を教えてくれる。自分で考え反応を感じながら、どうすればよいのか、試行錯誤しながら自分を強化する。自信をつけるまでは必要はない。楽しめるようになったら回復である。

多くのストレス関連障害は今の時代だからこそ生じている現象で、人ごとではなく誰にでも起こり得ることであり解決は可能である。コミュニティーが持つ「互認互助」「持ちつ持たれつ」「温かさ」が重要で、地域内での連携、連帯による「仲間意識」から解答が得られる。マニュアルはない。

次回は実際の事例と対応、地域内連携について報告する。

 

2020年02月12日 苫小牧民報 掲載

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