とまこまい医報
前立腺がんは恐ろしい病気だと思いますか?
前立腺がんは恐ろしい病気だと思いますか?
竹内 一郎
(苫小牧市医師会・苫小牧市立病院)
前立腺は男性にだけある臓器で、ぼうこうの下にあり尿道を取り囲んでいます。
加齢とともに大きくなるため、高齢になってくると尿の出が悪くなったり、日中や夜間の尿の回数が増える原因となります。
前立腺がんは高齢者に発症することが多いため、長寿社会を迎え患者様が急増しております。
国立がん研究センターがん情報サービス発表データによるとあなたは今何のがんにかかっていますか(罹患率)と質問をしたら、前立腺がんですと答える方が男性では現在4位ですが、今後さらに増えると予想されています。
ただ質問を変えて、あなたの回りの男性の方が何のがんで亡くなりましたかとしたら(死亡率)1位は肺がんで、前立腺がんは6位に後退します。
これは早期発見と治療法の進歩による恩恵も大きな要因であると考えられます。
前立腺がん早期の方の症状は先に記載した排尿症状がほとんどで、良性の前立腺肥大症と区別がつきません。
前立腺がんの早期診断には腫瘍マーカーPSA(前立腺特異抗原)の採血が特に簡単かつ有効です。
前立腺がんが気になる方は泌尿器科を受診するのが一番よいのですが、他科のクリニック、病院でも採血はしてもらえますので、結果に異常あれば泌尿器科に相談するのでもよろしいかと思います。
確定診断には生検を行うことが必要ですが、仮に不幸にもがんと診断されても早期がんであれは手術療法や放射線療法で根治することができますし、転移がある方でも男性ホルモンを抑制する内分泌療法が有効です。
これは根治する方は少ないものの注射、経口剤で外来にて治療開始できるため、進行がんの方や高齢者の早期がんの方に適した、いわば一生涯がんとうまく付き合おうという治療法です。
これらの治療をうまく組み合わせることで、全国がんセンター協議会のデータでは、診断時転移がない患者様が5年以内に前立腺がんで亡くなる割合は0%、転移がある患者様でも35%程度と良い成績が得られています。
最近のトピックとして東胆振地区でも手術療法としてダビンチという手術用ロボットを使用したロボット支援前立腺全摘出術が令和元年10月より苫小牧市立病院と王子総合病院で受けることができるようになりました。
実際に施行してみて患者様の術後は回復が早く、良い医療であることを実感しております。
皆様、前立腺がんはうまく治療すれば治る可能性の高いがんです。
排尿に不安のある男性は是非泌尿器科を一度受診してみてください。
2019年12月11日 苫小牧民報 掲載