緑内障 早期発見、早期治療が大切
中村 聡
(苫小牧市医師会・明野眼科クリニック)
中村 聡
(苫小牧市医師会・明野眼科クリニック)
緑内障による視覚障害の患者さんが増加しています。40歳以上の20人に1人が緑内障といわれ、年齢別では60歳代で13人に1人、70歳代では10人に1人と高齢になるほど緑内障にかかっている患者さんが多くなっています。以前は糖尿病網膜症による失明が原因疾患の第1位でしたが、H16の調査では緑内障が成人の失明原因疾患第1位となっています。緑内障は周辺からゆっくりと視野が失われていく疾患です。ですから視野異常が進行し、視力が低下する末期になるまで自覚症状がありません。また痛みなどの症状もないため、発見が遅れがちになります。このことから最近では健診でも緑内障を見つけるための検査項目が盛り込まれることが多くなってきました。まだ発見されていない潜在的な緑内障患者さんはまだまだ多く、無料検診などが行われて早期に緑内障が発見されるような試みもされています
眼球はサッカーボールやタイヤと同じように内部に一定の圧力があり、これを眼圧と呼びます。眼球の奥にある視神経が、この眼圧により圧迫されると視神経が少しずつ脱落して、視野が狭くなることが緑内障の原因です。かつては眼圧の正常値は21mmHg以下と言われていましたが、未治療時の眼圧が21mmHg以下でも緑内障になることがあり、これを『正常眼圧緑内障』や『NTG:normal tension glaucoma』 と呼んでいます。実は日本人の場合にはこの正常眼圧緑内障の割合が高いことが最近の疫学調査でわかりました。ですから眼圧値の測定のみでは緑内障の有無は判断できないと言えます。
緑内障患者さんに眼底検査を行うと、視神経の中央が大きく陥凹している所見がみられます。眼底検査(あるいは健診などの眼底写真撮影)を行うことで緑内障を発見することができます。この眼底検査を行い、緑内障が疑われた場合には視野検査などの精密検査を行うことが早期発見をするうえで重要となります。
緑内障の治療は点眼治療が基本です。点眼により眼圧値をもとのレベルより下降させることで視野異常の進行を遅らせることができます。最近では緑内障点眼の開発が著しく、種類も多くなってきました。以前では十分な眼圧下降が達成できなくて緑内障手術に至る患者さんが多かったのですが、点眼治療薬 の進歩により手術をしなくても済むようになってきました。緑内障は生涯にわたり治療が必要になる病気です。病状も患者さんによりそれぞれ異なります。年齢や視野異常の進行スピード、ライフスタイルなどにより治療をどこまで行うべきか患者さんとじっくりと相談する必要があります。
2014年06月24日 苫小牧民報 掲載