精神保健福祉法改正の要点と問題点
片岡 昌哉
(苫小牧市医師会・ウトナイ病院)
片岡 昌哉
(苫小牧市医師会・ウトナイ病院)
2013年に精神保健福祉法が改正され一部を除き本年4月から施行されることになった。改正の要点は 1)精神障害者の医療の提供を確保するための指針を厚生労働大臣が定めること 2)保護者制度の廃止 3)医療保護入院の見直し 4)精神医療審査会に関する見直しの4点である。今回この2)3)について問題点を指摘しておきたい。保護者制度の廃止については、これまで保護者には、任意入院及び通院患者を除く精神障害者に治療を受けさせること、財産上の利益を保護すること、医療を受けさせるにあたって医師の指示に従うこと、回復した措置入院者等を引き取ること、精神障害者の診断が正しく行われるよう医師に協力することが義務づけられてきており、過重な負担を負わせるものであるとして当事者や家族から削除が長年望まれてきたものであり、その点では評価できるものである。
しかし医療保護入院に関しては「家族等の同意《の下に強制入院が可能とされており、家族の強制入院に関与する現状は変わらない。また「家族等の同意《の「家族《にはこれまでのような法に基づく優先順位は規定されておらず、また配偶者や親権者以外の扶養義務者が精神保健福祉法上の同意者になる場合でも家庭裁判所による選任の必要がなくなり、家族等のうち誰か一人の同意があればただちに医療保護入院が成立することとなった。
医療保護入院という強制医療を行うための要件は今以上に厳格に定められるべきであり、その方向での改正を多くの関係者が希望していたわけであるが、これでは医療保護入院という強制医療の敷居を逆に下げてしまうこととなり、はっきりと改悪であるといえよう。
精神医療の現場では入院時に同意した家族とは別の家族が入院に反対するなど、入院を巡って家族間で対立が起きる可能性もある。医療保護入院については早期退院を実現するための新たな仕組みとして病院管理者に1)退院後の生活環境に関する相談・指導者の配置(退院後生活環境相談員の選任)2)地域援助事業者との連携 3)退院促進のための体制整備(退院支援委員会の設置)が義務付けられた。このことを契機として長期在院者の地域移行が進められることを願いたいが、精神科病院がどう動くかしっかりと利用者の観点から見ていただきたい。
2014年01月28日 苫小牧民報 掲載