骨粗しょう症の新しい治療
石間 巧
(苫小牧市医師会・あつまクリニック)
石間 巧
(苫小牧市医師会・あつまクリニック)
骨粗しょう症に伴う骨折・転倒は、脳血管の病気に次いで、高齢者に介護が必要となる原因の第2位(約20%)になっています。最近になり、効果的な治療薬が幾つも出現し、選択肢が広がってきましたので、少し解説したいと思います。骨粗しょう症とは、骨に含まれるカルシウムなどが減ることで、骨がスカスカになり、折れやすくなる病気です。ひどくなると、せきやくしゃみなどのわずかな衝撃でも骨折することがあります。骨は、他の内臓器などと同じように、古い部分が壊され(破骨細胞による骨吸収)、新しい骨を作り出して(骨芽細胞による骨形成)、新陳代謝をしています。そのバランスがうまくとれなくなり、骨の量が減ってもろくなった状態が骨粗しょう症といえます。最近発売されたデスノマブは、破骨細胞に働いて強力に骨吸収を抑え、骨量を増加すると言われています。
特徴は、6カ月に1回皮下注射をすれば済むことです。2年間の使用で、椎体(背骨)、大腿(だいたい)骨の骨折を、60~70%減少できる可能性が報告されています。副作用として、特に低カルシウム血症、顎骨壊死(えし)に注意が必要です。テリパラチド(副甲状腺ホルモン製剤)は反対に、骨をつくる骨芽細胞の働きを高めて骨量を増加させることにより、強い骨にしていくと考えられています。
特徴は、病院で週1回皮下注射するか、連日自己注射をして治療をすることです。合計72週間使用し、一生で一度だけの治療になります。副作用として、気持ちが悪くなる、嘔吐(おうと)、頭痛、だるくなるなどがあります。以前からある、骨吸収を抑えるビスフォスホネート製剤の使用方法も変化してきています。1日1回起床時に内服していたものが、1週間に1回、または1カ月に1回の使用になっています。1カ月に1回静脈内に点滴する製剤も出ています。頻度が少なくても同等の効果が得られるため、内服薬が多い患者さんの要望に、より応えやすいものとなってきています。
カルシウムを十分にとる、適度に運動する、日光に適度に当たるというのが、骨粗しょう症の基本的な予防法です。ただ、軽い転倒でも骨折する、背中や腰が曲がる、背が低くなる、腰や背中が痛むというのは骨粗しょう症の症状と言えます。心当たりがある方は、主治医に一度相談されてはいかがでしょうか。
2013年08月27日 苫小牧民報 掲載